ドイツに本社を置くダイムラー社が株式の過半数を所有する三菱ふそうトラック・バス株式会社（MFTBC）は、小型・中型・大型トラック・バスを生産するアジア有数の商用車メーカーです。彼らはグローバルに販路を持つ巨大企業ゆえ、市場でのコミュニケーションにおいて、ブランドの立ち位置を強く明示できていないという課題を抱えていました。
そういった中で、自身が在籍していたアドコム・グループは、三菱ふそうブランドを再定義するエージェンシーの役割を担うこととなり、私はその中でデジタル媒体全般を担当させていただきました。

ブランド再定義の主軸素材となったのは、次世代大型トラック「スーパーグレート」の包括的なグローバルローンチのコンセプト開発です。
業界内では高い人気を持つ三菱ふそうの代表的なモデル「スーパーグレート」は、2000年代に数度のマイナーチェンジを経た後の2017年、時代の変化に応えるため、環境対策やIoT化を目的とした21年振りのフルモデルチェンジを迎えることとなったのです。
業界を牽引する志のもと、同社が取り組んだのは、大型輸送業界初のAMT（マニュアル車のシフトチェンジを自動制御化）採用というチャレンジ。これは大型車としては異例のことでした。IoT化の側面では、ドライバー業務を軽減するために、ドライビングヒストリーの管理を簡略化するための仕組みを実装するなど、より現場を見つめた開発を実行していました。
私たちエージェンシーは、開発者の方々のインタビューを通して業界への想いを受け取り、表面的ではない核の部分を伝えるためのコミュニケーション設計に努めました。具体的には、フルモデルチェンジにおいて最も革新的であったエンジンと、その開発経緯を主役としたブランドストーリーをアプローチしていきました。発売後、この対象モデルシリーズの売り上げは前年比30%向上という結果に繋がりました。